こんにちは、リッキー徳永です。
米国弁護士の仕事といえば、英語で書くこと。当たり前ですがそこにはたくさんのストーリーがあります。
過酷なロースクールで鍛えられたライティングの能力も大事ですし、実務で文書を書くことも日常茶飯事。
それを誰が読むか?読む人もすごいもので、米国政府、訴訟相手の弁護士、裁判官や検察官など。
わっ!なんか大変そう、と思うでしょう。なにしろ、そう簡単には動いてくれなさそうな相手です。しかし、伝わるように書く方法はあるのです。
たしかに、読者の皆様は米国政府とか弁護士に書く機会はありません。
それでも、米国弁護士が身につけ、普段から活用しているようなことのなかで、皆様がすぐに使えることはたくさんあります。
英語の句読点(パンクチュエーション)
英語の文法というと、「主語」「述語」や「動詞」「副詞」をよく耳にしますね。当たり前なことです。
しかし、日本の学校で習う英文法は、「授業科目としての英語」みたいになっていて、教える先生もガチ日本人。
『これって本当に使うの?』みたいな英語を習わされる感覚はあります。僕もよくありました。
学生の頃、ネイティブはそこまで文法を気にしていないんじゃないかとも考えてました。
ところが、アメリカで弁護士をしていくうちに、何が大切で何がそうでないかが分かるようになったのです。実は、中学英語でも意外と大切なことが学べるのです。
実はアメリカ人弁護士も文法の正しい使い方には常に気を遣います。
そのような文法一つに、Punctuation があります。これは「句読点」という意味で、読み書きにとても大切。
句読点なので文字というよりは記号で表現され、文章を読むための交通標識のような役割を果たします。
実は英語には多くの記号がありますが、代表的なものは以下となります。
- (.) ピリオド[終止符]
- (,) コンマ
- (:) コロン
- (;) セミコロン
- (?)クエスチョン・マーク[疑問符]
- (!) エクスクラメーション・マーク[感嘆符(ビックリマーク)]
- (‘) アポストロフィ[省略符号]
- (“ ”) クオテーション・マーク[引用符]
- (-) ハイフン
- (―) ダッシュ
記号の役割や使い所はそれぞれ違います。
一般的に、読者はどこでどのくらい一息つき、論理的に文章を理解するガイダンスになるのがパンクチュエーションです。
交通標識と同様に事故を未然に防ぐ役割をするのもパンクチュエーション。ストップサインのように一旦止まって、文章の意味を考えさせることもできるのです。
英語の例文はできるだけ簡単な内容を入れました。ビジネスや法律文書にも活用できるように、実用的な例文も入れてあるので、すぐにご活用いただけると思います。
というわけで本記事では、重要な役割を果たし、正しい使い方があまり知られていない英語の句読点(パンクチュエーション)の基本であるコンマ Comma( , )について書きたいと思います。
このコンマ、実は英作文やライティングで正しい使い方をしないと減点されたり、ビジネスで書くときにはすぐにボロが出やすい、実は怖い記号の1つです。
そのかわり、正しく使えると英文がかなり見栄えがよくなりますし、読む側もとても助かります。
ネイティブから褒められることもきっとあるでしょう。
コンマの概要
文章を読みやすくするために日本語では読点をつけて区切るように、英文でもそれと似た働きをするのがコンマです。
パンクチュエーションの中でも使用頻度が一番高いものになります。
コンマの使い方は感覚だけではなく、使い方には決まりがあります。
基本的には区切りを入れるために使われますが、用法と規則はたくさんあります。それでは具体的に見ていきましょう。
1. 3つ以上の言葉を並べるとき
2つの言葉を並べるときは blue and red や fish or beef のようにコンマは必要ありません。
そこで、3つ以上の言葉を and や or で並べるときにコンマの出番です。
A and B とか X or Y
↓
コンマ必要なし
でも、、、
A, B, C, D, E, and F とか V, W, X, Y, or Z
↓
全部の言葉を and and and and で繋ぐと変なのでコンマを使って、and や or は最後に一回だけ
and や or は並んだ最後の言葉の直前に来て、その前の言葉はコンマで区切ります。
blue, red, and white のように使い、注意点は and の直前にもコンマを入れたほうがいい点です。
厳密には、blue, red and white でも間違いではありません。
しかし場合によっては、特に契約書では不明確な解釈がでてきてしまいます。以下の文章をご覧ください。
(受講料は、交渉、コミュニケーション、ファイナンス、会計の各セミナーにつき100ドルです。)
ここでは4つの単語 negotiation, communication, finance, accounting が並んでいます。
もし最後のコンマがなかったら、finance and accounting が一つのセミナーとも読み取れてしまいますね。
そうすると、セミナー料金が合計で300ドルなのか400ドルなのかがはっきりしなくなります。
このように、コンマを適切に入れることで、その威力を発揮するのです。
2. 2つの独立した節をつなげるとき
2つの独立した文節を、and, or, but, nor, for, so のような接続詞+コンマを使ってつなげることができます。
独立した文節とは、主語・動詞が入っていて、一つの完結した文章になっているものです。以下の例文を御覧ください。
It started raining, and I opened an unmbrella.
(雨が降り出した、そして私は傘を開いた。)
We collected all the evidence, but they were circumstantial.
(我々はすべての証拠を集めた、しかし状況証拠だ。)
文節をつなげるとき、主語が同じ場合はコンマは使いません。
以下の例では、主語である「私」がコーヒーを頼むことと休憩をしたことに共通して係っていますので、コンマは使わないことになります。
(誤) I ordered a cup of coffee, and took a break.
(正) I ordered a cup of coffee and took a break.
and で区切られた2つの文節の主語は「I」で共通しているので、コンマなし。
ただし、文章が複雑でコンマを入れないと内容が不明確になる場合は、主語が同一でもコンマを入れます。以下の例文を御覧ください。
(私はドーナッツとパンを注文して、休憩した。)
以下の例文を御覧ください。このような使い方は誤用です。
(誤) It started raining, I opened an umbrella.
正しい用法として、以下の使い方があります。
- It started raining. I opened an umbrella. ピリオドで終止符を打ち、2つの独立したセンテンスにする。
- It started raining; I opened an umbrella. セミコロンで接続する。
- It started raining, so I opened an umbrella. 接続詞で接続する。
- Because it started raining, I opened an umbrella. 従位接続詞で接続する。
3. 導入節を区切るとき
導入節とはその名前の通り、文章の最初の導入部分に使う単語のことです。
導入節は単語一つの場合 (例: Surprisingly) や、複数の単語によるフレーズ (例: In other words)。
ほかにも独立節 (例: Because I need to avoid caffeine,) もあります。
単語1つ:Fortunatelyなど
単語複数:By the wayなど
独立節:Because I was hungryなど
このような導入節が文章の前に来るときは、コンマで区切ります。以下の例文をご覧ください。
Luckily, the weather was good.
(幸運にも、天気は良かった。)
Surprisingly, the prosecutor did not object to the evidence.
(驚くことに、検察はその証拠に異議を唱えなかった。)
Two days ago, we tried to contact the witness.
(二日前、我々は目撃者に連絡を取ろうとした。)
Because the jury needed some more time, the judge extended the break.
(陪審員はもう少し時間が必要だったため、裁判官は休止時間を延長した。)
ただし、導入節が3語以内で短い場合はコンマを省略することが好ましいとされています。
4. クオテーション(引用符「” “」)を区切るとき
英文で誰かが話したことを直接引用することがあります。
コンマは、そのように人が話した内容を文章の中に入れるクオテーション(引用符)を区切るときに使用されます。以下の例文をご覧ください。
She said, “Look at that dog!”
(彼女は言った、「あの犬を見て!」)
The judge asked, “Do you plead guilty?”
(裁判官は尋ねた、「罪を認めますか?」と。)
コンマの位置も大切です。必ずコンマは引用符の内側に入れなければいけません。以下の例文をご覧ください。
(正) “I have a gun in my pocket,” he told the police officer.
(誤) ”I have a gun in my pocket”, he told the police officer.
5. 関係代名詞の非制限用法を使うとき
英語で便利なのが、コンマを使うだけで簡単に情報を付け足すことができることです。
関係代名詞の非制限用法は、言いたいことを少し付け足したいときや、付け足す内容がなくても本来の意味が変わらないときに使われます。
下記の例文では、彼が家を売ったという内容です。家が「2005年に建てられた」ことを付け足していますので、非制限用法のコンマを使います。
(彼は家を売った。その家は2005年に建てられたものだ。)
このように、非制限用法では which は物に対して使います。人に対してはwho を使います。以下の例文をご覧ください。
この例文では、あるミュージシャンがグラミー賞を受賞したという内容に、ロースクール出身という内容を付け足しています。対象が人なので関係代名詞 who を使っています。
場合によってはコンマで情報を付け足せないときもあります。
付け足そうとしている情報をなくすと意味が通らなかったり、大きく意味が変わってしまう場合は、非制限用法のコンマではなく制限用法の関係代名詞 that を使います。
以下の例文は制限用法の that が必要な場合です。なぜなら、数ある書類のなかで昨日提出された書類のコピーが必要という場面だからです。
(昨日提出された書類のコピーを送ってください。)
6. 等位形容詞・副詞を区切るとき
英文では形容詞と副詞は、対象の何かを修飾するために使います。
場合によってはこの形容詞と副詞が2つ以上連続することもあります。ここではそのような時にコンマが必要な例をご紹介します。
原則として、連続する形容詞と副詞が等位しているときには、コンマを入れて区切らなければいけません。
等位しているか見分ける方法は、それぞれの形容詞や副詞が修飾する対象に係っているか、または形容詞や副詞がお互いに修飾しあっているかです。
等位形容詞・副詞は、順番を入れ替えても、間に and を入れても意味が通じるのでそれで見分けることができるのです。
以下の例は等位形容詞なのでコンマが必要です。
(裁判所は信頼できる有効な証拠を認めた。)
副詞だと以下のようになります。
(彼は意図的に、そして無謀に信号無視をした。)
それではコンマを入れてはいけない用例を見ていきましょう。以下の例文をご覧ください。
(被告は影響力のある法廷弁護士を雇った。)
こちらの例文では連続した形容詞 influential と trial の間にコンマを入れることはできません。
なぜなら、and を入れると不自然になりますし、順番を入れ替えると trial influential attorney という意味が分からないものになってしまいます。influential と trial という形容詞は等位ではなく、形容詞どうしで修飾しあってるわけです。
7. コンマを入れたくても実は入れてはいけないとき
コンマの使用法で大切なのは、入れてはいけないところには入れないということです。
英文で時には主語がとても長いときがあります。そういうときは主語の最後とそれに続く動詞の間にコンマを入れたくなります。
しかしこれは正しいコンマの用法ではありません。コンマを入れたくなっても入れてはいけないのです。
以下の例文をご覧ください。違いはシンプルでちょっとした差ですが、コンマを入れてしまわないように気をつけましょう。
(◯)The fact that the TV reporter interviewed the expert witness several times last year was never brought up during the trial.
(X) The fact that the TV reporter interviewed the expert witness several times last year, was never brought up during the trial.
(TVレポーターが去年何度も証人に取材していたという事実は裁判中に一度も取り上げられなかった。)
(◯)Whether or not the property owner had a construction permit is the issue.
(X)Whether or not the property owner had a construction permit, is the issue.
(その不動産所有者が建設許可を取得しているかいないかが問題だ。)
8. 日付でコンマを正しくつかう方法
学校で習うことがないのに使用頻度が高いのが、日付を正しく書く方法です。
アメリカ式の日付は、月・日・年の順番です。コンマを入れるのは日と年の間になります。以下の例をご覧ください。
(私は1990年8月20日生まれです。)
もし曜日も入れたい場合、日付の前に置き、コンマも入れます。以下の例をご覧ください。
(締切は2019年7月20日水曜日です。)
ほかにもバリエーションはあります。月と年だけを書くときは以下のようになり、コンマは入れません。
(私はハーバード・ロースクールを2010年5月に卒業した。)
日付を文章の最後ではなく、最初や真ん中に入れる場合は日付の最後(主に年のあと)にコンマを入れる必要があります。
(2018年12月1日付けのあなたのメールは、合意が成立したことを証明した。)
英語で日付を書くときに関連するコツはこちらから。
9. 数字で正しくコンマを使う方法
数字が4桁以上になるときは、基本的に3桁ごとにコンマを入れます。この用法は日本でも同じですね。
- 9,000
- 77,777
- 937,573,500
ただし例外がいくつかあるので注意しましょう。
- 電話番号。数字が4つ並んでもコンマは入れません。例:212-384-5800
- 住所を表すストリートナンバーが4桁でもコンマは入れません。例: 2312 Main Street
- シリアルナンバー 例: 2847-5849283
- 部屋番号 例: ROOM 1291
- 年 例: 2019
10. 住所表記で正しくコンマを使う方法
住所を英語で書くときは、シンプルに見えて実は正しく書くことができない人が多いのです。
なぜなら、コンマの使い方、大文字と小文字の使い方、表記の順番などには一定の決まりがあるからです。
その決まりを知っているのと知らないのでは大きな差が出てきます。
まずは、以下のようにコンマをまったく使わない正しい書き方をご覧ください。アップル社の実際の住所です。
Apple Inc.
One Apple Park Way
Cubertino
California 95014
USA
コンマがまったくない理由は、改行をして縦書きにしているからです。
この住所の書き方は一番見やすく一般的となっています。
それでは住所にコンマが必要な書き方をご覧ください。以下のようになります。
このように、住所を改行せずに横書きする場合は、各行ごとにコンマを入れます。
11. コンマの位置を正しく使う方法
コンマの位置で、意味が逆になってしまうことがあります。
以下の例文をご覧ください。実際に死んでしまったのはどちらでしょう。
Happily, she did not die.
(幸いなことに、彼女は死ななかった。)
She did not die happily.
(彼女は幸せに死ななかった。)
この例文では、実際に死んでしまったのは2番目の文です。happilyの位置とコンマが異なることに注目してください。
まとめ
以上、コンマの正しい使い方について書きました。英文における記号の役割や使い所はそれぞれ違います。
コンマのようなパンクチュエーション(句読点)は、その役割を知り、正しく使うことで英語への理解を助け、さらに深めてくれます。
パンクチュエーションを普段から意識して使うことによって、自然と慣れてきます。記号の使い方なので文法を深堀りする必要もなく、成果が出やすいと言えるでしょう。
コンマをはじめとするパンクチュエーションを正しく使いこなせれば、英語をより速く正確に読むことができ、書くときに意味や意図を伝えやすくなるという目に見える結果が出てくるはずです。
というわけで、以上「アメリカ人弁護士も愛用!英語のコンマの使い方10選【英語の句読点(パンクチュエーション)】」でした。